小児外科は生まれたばかりの赤ちゃん(新生児)から学童期(中学生:16歳未満)までのお子さん方の外科治療なら国立岡山医療センター小児外科まで。

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虫垂炎


一般には“もうちょう”と呼ばれたりする病気です。

小児の急に生じる腹痛(急性腹症)において、便秘などと一緒にまず考える疾患の一つです。小さな便の塊(糞石)・異物や、腸炎などによる虫垂粘膜のムクミにより虫垂内腔の狭窄が起きると、虫垂の内圧が上昇してきます。すると、虫垂粘膜の循環が障害され細菌からの粘膜防御機構が弱まってきます。その結果、細菌が虫垂組織内に侵入し、炎症を起こして急性虫垂炎が発症します。

初期の腹痛は臍周囲に始まり、徐々に右下腹部に限局するようになります。発熱、嘔吐、さらに炎症が広がると下痢など症状を呈することもあります。

診療疾患画像
進行度により、一般的に下記の如くに分類されています。
① カタル性虫垂炎:粘膜内のみの軽度の炎症
② 蜂窩織炎性虫垂炎:全層性に白血球(好中球)が浸潤
③ 壊疽性虫垂炎:虫垂の壁構造が破壊される…穿孔の一歩手前
④ 穿孔性虫垂炎:内圧上昇と炎症により虫垂壁に孔が開いた状態
※ 虫垂穿孔による汎発性腹膜炎
虫垂の一部が破れ(穿孔)虫垂内の便や細菌が腹腔内に広範囲に広がり、腹腔全体に腹膜炎が生じた状態
※ 虫垂穿孔による膿瘍形成性腹膜炎
虫垂の一部が破れ(穿孔)虫垂内の便や細菌が腹腔内に出るものの、漏れが広範囲には広がらないので、炎症は腹腔内の一部にのみ限局化し、その部分に膿瘍が形成されます
術後の合併症が多いタイプの穿孔性虫垂炎です
小児は虫垂壁が成人に比して薄いので発症後容易に穿孔します。そのため、3~4歳以下の小児ではほぼ全員が穿孔した状態で診断されます。
症状・検査
病初期の腹痛は臍周囲に始まり、徐々に右下腹部に限局するようになります。発熱、嘔吐、さらに炎症が広がると下痢などの症状を呈することもあります。以前は、診断には相当の熟練を要しましたが、血液検査、腹部の所見、臨床経過に加え、画像検査(超音波検査:エコー検査、CT検査など)の併用により、診断率は格段に向上しています。
鑑別診断
便秘 胃腸炎 腸間膜リンパ節炎 原発性腹膜炎 エルシニア腸炎 クローン病 メッケル憩室炎 血管性紫斑病 肝炎 膵炎 腹部てんかん 大網捻転 腎盂腎炎 腎尿路奇形 女性付属器炎 肺炎 などと多彩です
治 療
① 手 術
A.開腹虫垂切除術
従来からの手術方法であり、右下腹部を約3-5センチ程度横に切開して、腹腔内に至り病変のある虫垂を切断・摘出します。炎症がひどければ、腹腔内を生理食塩水数リットル以上用いて洗浄します。また、膿が大量にある場合には、腹腔内にドレーンという管を挿入して手術後にも排膿を行うこともあります。
B.腹腔鏡下虫垂切除術
直径3ミリ-10ミリの長い道具(鉗子)を腹腔内の数ヶ所(2箇所)に挿入して、これを臍部に挿入した腹腔鏡というカメラでお腹の中を観察しながら、鉗子を操作して虫垂を摘出する方法です。小さな傷(5-10mm)は何箇所かつきますが、一つ一つの傷は小さいので術後の疼痛は開腹法にくらべて少なくなっています。しかし、熟練した技術が要求される手術法です。また、癒着などにより手技が非常に困難で確実な操作ができない場合は、開腹術に移行することがあります。
② 抗生剤治療
発症後非常に早期であり程度が軽ければ、手術をしないで、抗生剤の投与や絶食・輸液による保存的治療で軽快することがあります(虫垂炎を“散らす”という表現をします )。軽症であれば数日の入院で済みますが、中等症になってくると1週間以上の入院も必要になります。また、病勢が進んでくると、保存的治療は不可能になり、虫垂切除術を行わざるを得なくなることがあります。なかには、保存的治療で一旦治っても、再発する患児もいます。

当院では、虫垂炎症例はほとんどは腹腔鏡下虫垂切除術で治療しています。