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陰嚢水瘤(水腫)


足の付け根の部分をソケイ部(鼠径部)と呼びます。この部分には腹腔(お腹の中)と精巣を結ぶ“管”(ソケイ管)が存在します。ソケイ管は精巣のない女児にも存在します。

妊娠中に一時的に発生する突起(腹膜の一部がソケイ管の中へ突び出て発生する突起であり腹膜鞘状突起((ふくまくしょうじょうとっきと呼びます)の中へ腹腔内の臓器(小腸や大腸 女児では卵巣など)が脱出したものが小児のソケイヘルニアです。

* 発症の仕組み
:腹膜鞘状突起は胎生3ヶ月頃に腹膜の一部がソケイ管の中へ突出して発生します。通常は生後7ヵ月で約60%が閉鎖し、出生までには約98%前後が自然に閉鎖します。
小児のソケイヘルニアは、
① 開存したままの腹膜鞘状突起部分に過剰な腹圧や腹水などか加わる
② 本来備わっているヘルニア防止機構の破綻
の2つの理由で、腹膜鞘状突起内に腹腔内臓器が脱出することにより発症します。脱出臓器には、腸管、卵巣(女児)、大網(たいもう)などがあります。
一方、陰嚢水瘤(水腫)では
③ 開存したままの腹膜鞘状突起部分に腹水が溜まり、これが袋状に膨れてくる(小児型)
④ 腹膜鞘状突起内の腹膜が腹水を大量に産生する(成人型)
この2つの理由により発症します。
診療疾患画像

診療疾患画像
症 状
陰嚢部、あるいは足の付け根(鼠径部)が膨隆します。特に夕方になると目立つことがあります。他の疾患(例 ソケイヘルニア、鼠径部の化膿性リンパ節炎など)でも良く似た状態に見えることがあります。腫れてもあまり痛がってなければ、腫れている部位・痛み・硬さなどをよく観察をしておいて下さい。腹膜鞘状突起の孔は非常に細い(小さい)ので、自然に治ることもよくありますが、再発することもあります。
また、水瘤により精巣が挙上したままの状態が何年も続くと停留精巣に移行する(あるいは、停留精巣の診断が水瘤により遅れる)ことがあります。水瘤のみではソケイヘルニアとは異なり、即手術の適応になることはありませんが 、定期的な受診が必要なこともあります。