小児外科は生まれたばかりの赤ちゃん(新生児)から学童期(中学生:16歳未満)までのお子さん方の外科治療なら国立岡山医療センター小児外科まで。

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包茎


包皮は外板と呼ばれる外から見える部分と、陰茎の先端で折り返して亀頭と直接接触している内板と呼ばれる部分からなり、幼児期は折り返しの部分(包皮輪 下図参照)が狭くなっています。包茎とは亀頭が露出していない状態にある陰茎のことを言いますが、包茎は大きく2つのタイプに分けられます。真性包茎とは、包皮輪が狭く剥こうとしても剥けない包茎であり、仮性包茎とは包皮輪が広く剥こうとすると剥ける包茎のことを言います。内板と亀頭は小児では癒着し合っていることが普通ですが、加齢とともに癒着が外れ、包皮の反転は容易になってきます。

診療疾患画像

本邦での真性包茎の頻度は、1歳児で90%、3歳児で30~40%、15歳児は1~2%前後といわれています。
包皮が剥けない状態がいつまで続くのかは個人差がありますが、陰茎が急激に成長する思春期(10才~15才頃)までは包皮を完全に剥くことが出来ない男児も普通です。したがって、単に包皮がむけないと言う理由だけでは小児期の手術や特別な治療は不要です。

しかし、以下の症状がある場合は絶対的な手術適応となります。
① 包茎により腎機能障害が進行する場合(本邦では年間に1人以下の発生)
② 包茎により陰茎の勃起障害が生じた場合(本邦では年間に数人程度の発生)
③ 包皮が著しく肥厚した包茎(自然に剥けてくる可能性がないため)
④ 整復不能の嵌頓包茎

両親の宗教上の信条により治療を行う場合は別として、絶対にこうすべきだという世界共通の医療上の認識があるわけではありません。『亀頭の先端が赤く腫れる亀頭包皮炎をよく起こす』『将来子供が悩むのではないか』などを心配して受診されるご家族の方のは多いのですが、お国柄や各々の医師により様々な意見があります。我が子の包茎の治療を行うかどうかは、包茎に関する事実の確認、治療を行うとしてらその治療の内容、治療によりもたらされる良い点・悪い点、を充分に知った上でご両親自身が判断すべきことです。

包茎はいわゆる「病気」とはいえないこと、子供さん自身が治療を望んでいるわけではないこと、を銘記し大人の思惑によって健康な子供さんを肉体的・精神的に傷つけることがないようにしてください。手術時期に関しても決まった手技はありませんが、本邦では真性包茎→仮性包茎にする手術が小児では標準です。

<<嵌頓包茎>>

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包皮が剥けた状態のままで、元に戻らなくなることがあります。これを嵌頓包茎といいます。元に戻らない状態が長時間続くと、亀頭はむくんで痛みを生じることがあります。また、包皮にも著名な浮腫が生じます。嵌頓包茎で受診されると先ず用手的な整復を試みますが、整復できない場合は緊急手術を行うこともあります。

<<亀頭包皮炎>>

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包皮の著明な発赤 浮腫 疼痛/掻痒感 排尿痛などを認めています、真性包茎が原因で亀頭包皮炎になると考えている人がいますが、下表のように真性包茎と亀頭包皮炎の発生には全く相関がありません。したがって、真性包茎の治療を行っても亀頭包皮炎の予防はできません。

仮性包茎・真性包茎児の包皮炎の割合 (当科外来データより)

仮性包茎     57 人   亀頭包皮炎  +  25 人
 亀頭包皮炎  -  32 人
真性包茎    163 人    亀頭包皮炎  +  20 人
 亀頭包皮炎  -  143 人

乳児期(特に6ヶ月以下)の尿路感染症(尿の中で細菌が増殖して腎臓や膀胱に炎症を起こす病気)の頻度は、環状切除術を受けている男児の方が、環状切開を受けていない包茎の男児より低い可能性はあります。しかし、仮性包茎の児と真性包茎の児の尿路感染症の発生頻度の比較データはありません(一般には、それ程の差はないと考えられています)。本邦では、小児の包茎の手術=真性包茎を仮性包茎にする手術 が標準手術であるので、尿路感染の予防目的での包茎手術の必然性はないと考えられます。

陰茎癌は高齢者に見られる極めてまれなガンですが、新生児期に包皮の環状切除術をしていると生じないといわれています。しかし環状切除術を行っていない日本て陰茎癌の発生率が高いという報告はありません。小児期のみならず青年期、壮年期を通じての長期の衛生環境の関与も考えられ、ガンを予防する目的で敢えて小児期に環状切除術を行う必要はないといえます。